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馴染んだ場所

「うわぁー、見てみて!!雪だよ、雪!!」

午前中の授業でどこかのクラスが雪を降らせた、と聞いてラギを引っ張って中庭に来ると、一面を真っ白な雪が覆っていた。

既に結構な人数が雪合戦をしたり、雪だるまを作ったりしていてとっても心ひかれる。

私も廊下から一歩踏み出すと10cmほど積もっているようで、きゅっという音を立てて足跡がついた。


「こんなにたくさんの雪を見たの初めて!!」

「おい、滑らないように気をつけろよ?」


はしゃぐ私に対してラギはどこ吹く風で廊下の柱に寄りかかっている。

出会ってからもう2年もたつのに、大人びたラギは格好よくていまだにドキドキする。


「大丈夫!!ほら、ラギもこっちきて!!」

「あぁ?別に俺には雪なんて珍しくねーんだよ」


そんなことより腹が減った、と言って動こうとしないラギに仕方なく私は一人でモルガナ様の像の方へ足を進めた。

本当は雪合戦がしたかったけれど、流石に小さい子に混ざる勇気はなかった。


「あ、ルルさんだ!!」


きゅっきゅと雪の感触をたのしみながらゆっくりと歩いていると、知り合いの女の子がこちらに走ってきた。


「こんにちは、…って、危ない!!」

「っきゃぁ!!」

「ルル!!」


それは一瞬のことだった。

飛んできた雪合戦のながれ玉に驚いたその女の子は走ってきた勢いそのままに前へ躓いてしまった。

それを助けようと女の子を受け止めたところまではよかったのだけれど、思いのほか強い勢いに足を滑らせて私は後ろに身体が傾くのを感じた。

とにかく腕の中の女の子にけがをさせないようにと、頭を打つ覚悟でぎゅっと抱きしめ目を閉じた。


「あ、れ?私、転んでない…?」

「…ったく、お前は本当に目を離せねーな」


しかし、予想していた痛みはなく、私は馴染んだ腕の中にいた。


「ご、ごめんなさい、ラギ。びっくりしたね、大丈夫?」

「は、はい。大丈夫です」


抱え込んだ子は目をパチクリとさせていたが、私の腕から手を話してしっかりと立ちあがった。


「で、お前は?怪我してねーか?」

「ええっと…足をくじいちゃったかも」


転ぶときにぐにゃりとへんな方向に曲がった足がずきずきと痛む。

骨折とかにはなっていそうにないが、力が入らない。


「大丈夫か?まぁ、今回はしかたねーな…」

「ごめんなさ…きゃ!!」


一人でしっかりと立っていることもできずにラギにつかまる私を、ラギは軽々と抱き上げた。

歩けない自分が悪いのだけど、小さい子もたくさんいるし、人目のあるお昼の中庭でこの状態は照れる。


「わぁー!!おとぎ話みたい!!格好いいー」

「え…えっと…」


そんな私達を女の子は瞳をきらきらさせてこちらを見ている。

確かに言われてみると、整った顔立ちにマント(制服だけど)ををひるがえして助けに来てくれ、私を抱き上げたラギは物語の騎士に見えるかもしれない。


「…は、恥ずかしい…」

「あのな…だったらもっと気をつけてくれ」

「うん…でも、ちょっと幸せかも」

「っ…変なこと言ってんじゃねー」


私の気持ちを知ってか知らずか、さくさくと雪の上を事もなさげに歩くラギの肩に私は顔をうずめて呟くのだった。




 

lor="#ff3366">心地よいあなたに包まれて



 


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