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Sweeter

…確実にこの政務は僕にまわってくる。

そう確信しつつも僕は厳重に守られている宮の奥へと向かっていた。


「申し訳ありません、殿下。その…ビラール殿下が誰も入れるなと…」

「構わない。責任は私がとるから通してくれ」


思った通り、僕の求める人はこの先に居るらしい。大切な宝石を包むかのように幾重にも天井から垂れ下がっている絹は美しいグラデーションを描いている。


「…お母様、アニスです」


数秒後に見る光景に取り乱さないよう、大きく深呼吸をしてから僕は絹に手をかけた。



「こら、そのまま寝ていろ。私が行こう」

「でも…ごほっ、ん…」


広い部屋の窓際に置かれた寝台から響くいつ聞いても本当に父の声なのか疑いたくなる甘い声色に、今すぐまわれ右をしてしまいたいがそうはいかない。


「どうぞそのままで、僕が行きますから」


真昼間だし、母は体調を崩しているというのに甘い雰囲気の漂わせる両親は年がら年中この調子だ。

妹と違ってこういうことが得意でない僕には耐えがたい。


「お加減はいかがですか?お母様」

「大丈夫よ。ただの風邪なのに、みんな心配しすぎなんだから…」


寝台の上に座っている父の足を枕にしている母の様子はいつもより少し頬が赤いくらいで安心する。

その頬が赤いのも熱のせいなのかは知りたくないが。


「さて、アニス。あまり聞きたくはないが、お前が来るということは何かあったな?」

「はい、父様にお預かりしていた案件でトラブルがあったらしく、至急来て欲しいと」


部屋から出てこない父に代わって妹と政務をこなしていると持ち込まれたトラブル。

そう重要なものではないが父の許可なく僕が行くのははばかられ、母の傍から離れないであろう父に会いに来たのだ。


「わかった。悪いが代わりに行ってもらえるか?」

「ちょっと、ビラール…んっ、ごほ…」

「大丈夫か、ルル。ほら水を…」


…嫌な予感がしたが、一瞬顔をそらすのが遅れてしまった僕は、父が母に口移しで水を飲ませるのを見せつけられてしまった。

口移しで終わるはずがなく、深いキスを仕掛ける父にさすがに僕は窓の外へと視線をそらす。


「んんっ!!…ぁ、ん…はぁ、ビ、ビラールっ!!」

「なんだ、もっとか?ルル…」

「そうじゃなくて、子供の前で…」


顔を真っ赤にした母がぐいぐいと父の胸を押して抵抗するが、父は全く気にしてはいない。

つまり今、母は父の腕の中にいる。


「我が妃があまりに愛らしくてな…アニス、いいか?」

「わかりました。フェリアが残りますので仕事はご心配なさらずに。では、お大事になさってくださいお母様」


すぐにでもいたずらを始めそうな父の、邪魔をするな、というような含みを持った声に始めから用意していた言葉を残して僕は部屋を出る。


今度こそ、"誰も"この部屋に入らないよう、従者い言い含めて。







Sweeter Future  



 

→おまけ?



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あきゅろす。
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