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契約の印
 
あの時の私は自分でもどうかしてたと思う。

でも…どうかしてたのは私だけじゃなくて、アルバロも一緒だったと思う。

ベッドに仰向けになって両手を持ち上げてみる。


片手の甲には数年前からの見えない契約の印。

そして、もう片方の指には――







  







「んぁっ…アル、バロ…も、んぁ、はぁん…!!」


ぎしぎしとベッドが軋むほどに、激しくアルバロが私を責める。

それも、いつもみたいに意地悪な行為は一切なくて私の感じる場所を容赦なく突き上げる。


「…いいんだろ?ほら、イけばいい」

「ふぁ、はぅ…ま、まだ、だもんっ!!アルバロ、こそ、んんっ、ぁ…我慢は、良くないわよ…?」


本当はもう限界ぎりぎりだったけれど、私はどうにか意識をかき集めてお腹に力を入れると同時に、アルバロの首筋に浮いた汗を舐めとった。


「っく、馬鹿が…煽ったこと、後悔するぞ…」

「それ、は…こっちの、セリフよ…ん、ひゃ…あぁ―――!!」


…結局、後悔したのも、勝負に負けたのも私だった。


勝負のきっかけはたわいも無いことだった。街で見かけた恋人同士のどっちがより好きかが問題の喧嘩。


『知ってたルルちゃん?先にイったほうが、相手以上に好きなんだよ?』

『…へー、じゃあ私ってアルバロにすっごく好かれてるのね?』






――――
――





「…アルバロって、ほんっとうに負けず嫌いよね…」

「お前こそ、鈍感」


情熱的な繋がりの後、ベッドから離れて行くアルバロの背に私はシーツにくるまって話しかけた。

…その背中に残る赤い傷に満足しながら。


「鈍感?どこがよ!!」

「そうやって、いつまでも俺の事を試してるあたりが。俺がピエロなら、お前はクラウンだな。簡単に俺の気持ちを暴いてくれて」

「きゃ…?なに?」


アルバロの気持ち?そんなのいつまでたってもわからないのに、何を言っているのだろう。

今日一日の発言を思い出そうとすると、アルバロが結構な勢いで私に何か投げてきた。反射的にそれを受け止める。

小さなビロードの薄ピンクのハコ。

…まさか。


「結婚しよう、ルル」


いきなりの展開に呆然としている私の手からアルバロはその箱を取り上げて、なんのためらいもなく開けた。

そして、そのきれいな指によってとりだされたのは銀色の細いリングだった。


「いつまで馬鹿な顔をしている。ほら、手を出せ」

「…え?ちょっと待って!!」

「待たない。これからは俺以外を視界にいれるな」


優しさとは程遠い無遠慮さで、左手の薬指にその指輪が滑っていく。


「う…そでしょ?」

「何が嘘だ。だから鈍感だって言うんだ。どっちが先にイったかで、気持ちが量れたら苦労しない」

「つまり、その話は嘘ってこと……え?つまり、あの言葉って…」

「たまには、お前以上に好きだと思うことだってあるってことだ」


そう言って、頬におとされる口付け。


それはきっと、3つ目の契約の印――







「俺がピエロなら、お前はクラウンだな。」
(china様)


「結婚しよう」
(美奈様)


「俺以外を視界にいれるな」
(立夏様)





あきゅろす。
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