新婚…さん? 《アシュ》R-18
チュンチュン…
鳥のさえずりでアシュヴィンは目を覚ました。窓から差し込む光は部屋を浄化しているような気持ちにさせる。
(…豊葦原、か…)
自分が統治する常世で、こんな朝が迎えるようになるのはまだまだ遠い未来だ。
寝台の横では金の髪を散らし、千尋が眠っている。
時間的にそろそろ起こすべきだろう。
「…千尋、そろそろ起きろ」
「…すー、すー…」
声をかけるが千尋は全く反応しない。
その様子にアシュヴィンの悪戯心が持ち上がる。
(こんな無防備に眠りやがって…)
さらさらとした髪をすくい、口付ける。それがいつの間にか始めの合図になっていたから。
(昨夜は我慢してやったんだ、少しくらい遊ばせろよ?)
昨夜は仲間が周りにいる状況ではしたくないと駄々をこねた千尋に折れ、寝台を共にしたが手は出さなかった。
「千尋、起きないと知らないぞ…」
再び声をかけながら、その細い首に舌を這わせた。
「う…ん、もー少し…」
今度は答えたが目は閉じたまま。…無意識なのか、アシュヴィンに身体をすり寄せてきた。
「俺は別にいいけどな…好きにさせてもらう」
その愛らしい様子にクスクスと笑い、アシュヴィンは行為をエスカレートさせていく。
寝間着の胸元に手を入れ、ふにふにとした膨らみを揉む。
「ん…アシュ…」
「…もっとか?」
これも無意識であろう呼ばれた名前を勝手に解釈し、アシュヴィンは慣れた手つきで寝間着を脱がしていく。
「…綺麗だな…」
朝日に照らされた千尋の裸体にアシュヴィンは感嘆した。
真っ白な肌に色づいた胸の頂き。
脇腹が緩やかなカーブを描き、くびれを作っていた。
アシュヴィンはなかなか見れないその姿を十分に楽しんだあと、先ほどあえて避けていた紅い先端に口を近づけた。
ピチャ…ピチャ…
仔猫のように舌を出して下からすくうように触れると…
「あん…ふっ、アシュ…」
千尋は甘い声を漏らしてアシュヴィンの頭に腕を回した。
「…おい、いい加減にしないと止めてやれないぞ?」
「んん…んー…?」
まだ意識は眠っているのだろう。その証拠に一度も目を開けない。
「千尋…」
ねだるような仕草にアシュヴィンは悪戯から本気になる。
片方を指で転がし、もう片方は複雑に舌で愛撫する。
ジュルッ…チュ…
唾液を絡めて味わうと、千尋は流石に目を開いた。
「ふぁ…ぁん、…ア、シュ…?」
「ん…やっと起きたか、千尋」
アシュヴィンは唇を胸から離して千尋に口付けようとした…が。
「きゃぁぁっ…!!なにやってんの!?」
千尋は自らの状況に気付いて抵抗し、すぐさま着衣を整えた。
「何って…ナニだろ?言っておくがお前が誘ってきたんだからな」
アシュヴィンはしれっとした表情で答えるが、千尋は身体をわなわなと震えさせいる。
「俺が起こそうとしたらねだってきたんだからな。ちゃんと起きなかったお前が悪い」
「ねだっ…そんなわけないでしょっ!!それに、起こしてくれるならきちんとした方法で起こして!!」
アシュヴィンの言葉に千尋は声を荒げて怒りを爆発させた。
「きちんとしたって…それはお前の責任転嫁だぞ」
無駄だとわかりながらもアシュヴィンが返すと、千尋は相当混乱しているようで思いがけないことを言った。
「アシュヴィンのバカっ、変態っ!!風早はいつも優しく起こしてくれたもの!!」
他の男――しかも天敵である風早の名前にいらっとした時だった。
「…千尋っ!!」
先ほどの叫び声を聞いたのだろう。風早が息を切らして部屋に入ってきた。
「かざはやぁ…!!」
千尋は風早のもとに駆け寄ると、ぎゅっと抱きつく。
多少乱れている寝間着一枚で。
「どうしたんですか?なにか危ない目にあったのではないですね?」
そんな千尋の背をぽんぽんとあやすように叩いて風早がいう。
「うん、大丈夫…心配させちゃってごめんなさい」
「大丈夫ならいいんですよ。さて、着替えて朝ごはんにしましょうか」
そう言って風早は優しい笑顔を見せる。
…もちろん寝台の上で睨んでいるアシュヴィンの存在は一切無視。
「うんっ!!風早大好きっ」
「朝から嬉しいですね。俺も大好きですよ、千尋」
新婚のような甘い会話をしながら二人は部屋から出ていった。
風早が部屋を出る直前、凍るような冷たい視線を向けたのをアシュヴィンは見逃さなかった。
「くそっ…!!なんだっていうんだ、千尋はあいつに甘えすぎだし、あいつもあいつで…!!…ちっ!!」
新婚なのは俺の方だろっ…!!
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