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あなたの前では《Mathew》


「あっ!!マシュー!!」


寮の中をうろうろしているとどこからかルルの声がした。きょろきょろとあたりを見回してみるが、あたりに人の姿は見えない。


「ルル?どこにいるんだい?」


僕の声に彼女は答えることなく、くすくすと笑い声が聞こえるだけだ。


「こーこっ!!」


「えっ…うわぁぁ!!」


急に背中に誰かが飛びついてきて僕は転びそうになった。…転ばなかったのは同じようによく飛びついてきた兄弟のおかげだろう。


「ルル!!いつの間に後ろにいたんだい?」


「ずーっといたよ?マシューが気付かなかっただけで」


僕の首に腕をまわして抱きついたままルルはにこにことしている。


「光の魔法で隠れていたの?全然気がつかなかった。ルルは魔法がすごく上手になったね」


「そう?マシューにそう言ってもらえるとうれしいな」


「僕になんて言われるより、ユリウスみたいにもっと魔法がうまい人に言われたほうがいいでしょ?…それよりルル、いつまでその…僕にひっついているの?」


いつ誰かがやってくるかわからない状況に僕は戸惑って言うと、ルルは不満そうに顔をゆがめて僕の頬を引っ張ってくる。


「ちょっ…いらいよ、ルル」


「もうっ!!私はユリウスに言われるより、マシューに褒めてもらえるほうがずっとうれしいの!!…私が好きなのはマシューなんだよ?」


そう言って仕方なさそうに僕から離れたルルの顔は真っ赤になっていてついつい笑みが浮かんでしまう。


(…真っ赤になっちゃって、かわいい)


何のとりえもない僕のどこがいいのかわからないけれど、こんなルルが見れるのはきっと僕だけだろうと思う。僕は明るくて元気一杯の彼女の隣でそっと支えていけたらいい。


「もうっ!!どうして笑うの?」


「ごめんごめん。ありがとう、ルル。僕も君が好きだよ」






  あなたの前では素直でいたい



 

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