長い夢
1
「10分休憩!水分補給しっかりねー」
「「「はいっ!」」」
彩芽の指示を受けて大きな声で返事をする一年生達だが、その顔には春とは思えないほどの汗が流れる。
「湊先輩、次は何するんですか?」
「んとね、この後はインターバルやって、それからフットワークよ。時間があればパス練もできるかなー」
練習メニューを記したバインダーに目を通しながら答えると、周りからは悲鳴にも似た声が上がる。
「また走るんすか!?」
「ランニング終わったばっかなのに…」
「弱音吐かない!走ることはスポーツの基本なんだからね」
「は、はい…」
殺人的メニューにしゅんとうなだれる一年生達を見て彩芽は、ふっと笑みをこぼす。
海常バスケ部では先輩が後輩を育てるのが伝統だ。新入部員はGW合宿までは先輩と分かれて基礎中心のメニューをこなし、その後一軍・二軍に振り分けられる。
合宿までの新入部員の練習は二年生が交代で見る。
そして今年、その総指揮に指名されたのがマネージャーの彩芽だった。
始めはどうなることかと思ったが、今年の一年生は皆素直で一生懸命な子ばかりで張り合いがある。
「私はちょっと一軍の所に行ってくるから、戻ったら練習始めるからね!」
彩芽は周りを見渡してそう言い残すと、一軍の体育館へ向かった。
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