長い夢
4
キセキの世代と言えばバスケをやっている者で知らない者はいないほどの有名人で、彩芽もその存在は知っていた。
しかし黄瀬に会ってみて、そのギャップに驚いた。勝手に体育会系なムキムキマッチョをイメージしていたが、実際の黄瀬はいかにも今風で都会的な優男の印象。
しかも監督の意向で黄瀬は一軍スタート。つまり、新入部員練習担当の彩芽はまだ黄瀬のプレーをまともに見たことがなく、彼とバスケを結びつけられなかった。
「実際どうなんですか、黄瀬くん」
「あぁ。身体能力は相当高いし、才能も計り知れない」
「今後三年間は間違いなくアイツがうちのエースだろうな」
「へぇ…あ、蹴られた」
いつまでも女子達に愛想良く手を振る黄瀬に、痺れをきらした主将・笠松の蹴りが入った。
蹴られた背中をさする彼を何気なく眺めていると、目が合った。
「あれ…」
「どうした?湊」
「あ、いえ」
なんだろう。目を逸らすほんの一瞬、黄瀬が微妙に顔をしかめたような…
「…気のせい、かな」
「ところで、他の一年たちはどうだ?」
「え?あぁ、皆素直でいい子ですよ。ただ、身体が鈍ってる子が多いんで、今はひたすら体力作りですね」
練習メニューを見せると、森山と小堀は顔を引きつらせた。新入部員練習は代々ほぼ同じメニューなので、昔を思い出したのだろうか。
「俺らの時より厳しくないか、小堀」
「確かに…」
「海常の金の卵たちですからね。気合い入れて育てますよ♪」
彩芽は笑顔で答える。
今は練習についていくだけで精一杯な一年生だが、彼らもいつかは海常の看板を背負ってコートに立つ日が来る。
「楽しみだな」
「はい!」
今目の前で穏やかに笑うこの先輩達のように、彼らも活躍できますように。
そう願い、自分も全力で彼らを支えようと誓った彩芽だった。
未来
(ところで黄瀬が来てから俺“残念な方のイケメン”って言われてるらしいんだけど)
(…もう、黙りやがってください)
(森山、お前ってほんと…)
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