長い夢
3
どうやら一軍は各々が自由に休憩をとるスタイルらしい。彩芽は休憩に来た部員にドリンクを渡しつつ、森山たちと談笑していた。
「ところで、我が海常バスケ部には重要な問題がある。わかるか?」
森山の唐突な謎掛けに、小堀と彩芽が顔を見合わせる。
「今年はマネージャーが入らなかったことだ…!」
「「……」」
「可愛い後輩マネージャーあってこその部活だろう!」
タオルを握りしめて悔しそうにぎりりと歯を食いしばる森山は、小堀と彩芽の何とも言えない視線をものともせず熱弁をふるう。
「…森山、湊だって可愛い後輩マネージャーじゃないか」
「小堀先輩…!」
小堀が穏やかに森山を諭す。海常バスケ部の良心と名高いだけあって、彩芽のフォローも忘れないのはさすがだ。
「いや、もちろん彩芽ちゃんも可愛い後輩だ。だがな、俺は一年生のマネージャーが欲しかったんだよ!俺の三男マジック計画をどうしてくれる!?」
「そんなもん知りませんよ。てか、あの状況でマネージャーなんてとれるわけないでしょう」
言いながら彩芽はちらりと体育館の二階を見上げる。そこには大量の女子、女子、女子。
そして彼女らの視線はただ一点に熱く注がれている。
「きゃー!黄瀬くーん!」
「どもっス!」
「「「「きゃー!!」」」」
───黄瀬涼太。
入部二週間にしてスタメンの座を勝ち取った、キセキの世代と呼ばれる天才。
バスケの実力もさることながら、モデルもこなすその容姿の良さとフレンドリーさでご覧のとおり女子人気は高い。
今年は黄瀬目当てのマネージャー希望者が殺到し、監督と主将とマネージャーで散々話し合った結果、マネージャーをとらないという結論に落ち着いたのだった。
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