Part.2 「貴女には、雨が降っているように見えるのですか?」 「−−!?」 想定外も外過ぎる神父の言葉に、メルコットはア然とした。 「確かにこのところ、ずっと曇りがちで嫌な天気ではありますが−−雨は降っていませんよ」 アレンは傘を差していた、メルコットも雨に濡れて−−いや、考えてみれば雨にも濡れない雨だから、メルコットは傘なんて差さなかった。 住人が傘を差していなかったのも、もしかすると−−思案していると、神父はステンドグラスを指差した。 「ご覧ください、雨は降っていますか?」 ステンドグラス越しの景色では曖昧だが、まず……雨の音などしないし、雨特有のじめじめした臭いもしない。メルコットは外に出た。 空を仰げば−−神父の言う通りに雲ってはいてこそ雨など降っていなかった。 (私はとんでもない思い違いをしていたみたいね……) 「貴女の雨は晴れましたか?」 神父がツカツカと歩いて来た−−ぴったりと、一っミリのズレもなく、教会の出入口まで来て、彼は歩を止めた。 まるで教会から外には出られないような−−。 (ああ、そうか−−) メルコットの、散りじりとなっていた情報が、ピースとなって上手く埋まっていく。 「神父様−−お陰で、気付かなかった事に気が付けました」 「そうですか! 貴女に−−神のご加護がありますように」 礼をして神父は、作業のように教会へと戻って行った。 ←Return.→Next. [戻る] |