奥様は×××
1
日曜の朝。
リビングのソファーに座るスウェット姿の奥さま。ティッシュを片手にテレビを見る奥さまの目と鼻は真っ赤だ。
「花粉症?」
「そーかも」
ズビズビ…。
かみすぎた鼻と擦り過ぎの目が痛々しい…。
隣に座る俺は思わず梓鶴さんのお顔に手を添えた。そして鼻の頭をぺろり。
「……何してんだよ」
「俺の愛で治そうと思って」
真顔で答えた俺の頬に梓鶴は手を添えてほっぺたをぎゅーっと抓った。
「オッサンのよだれで治ったら苦労しねんだよ!!」
「痛ひゃい痛ひゃい痛ひゃいーッッッ」
容赦ない抓りに梓鶴の手を叩いてギブアップを示すけど離してくれない。
最後にはピッと千切れんばかりに引っ張られてようやく解放された。
うー。ほっぺたがヒリヒリする。
本当に冗談通じなさすぎ。
それはさておき、梓鶴がこんな状態と言うことは…
「花見…行けない、よね?」
「は?ナシだろ」
またもやティッシュに手を伸ばして鼻を啜った。
近所の神社の境内には樹齢何百年という大きな桜の木があり、この時期には空をピンクに染め上げるほどの花が咲き誇る。
夜にはライトアップされ、出店もやってるからちょっとしたお花見スポットだったりする。
でも、神社は山の中にあって杉の木もわんさか植わってるから梓鶴はくしゃみが止まらなくなるかも。
あーあ…。すっごい行きたかったんだけどな…。
桜の木の下で梓鶴の作った弁当を食って、
『あ〜、酔ってきた』
『っとに。しょうがねーな。ホラ』
ぶっきらぼうな言葉とは裏腹に梓鶴は俺の肩にそっと手を添えて横たわる様に促す。そして優しく膝を貸してくれた――。
ってな感じで膝枕の夜桜見物したいのに!!
何より、入学式に行けなかった訳だから一緒に桜を見る機会がなかった事が大きいよ。
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