奥様は×××
4
「梓鶴ー、遅っせぇよ」
「フツーだろ。つーか何コレ。お前等?」
片手に持っていたドアノブを、フェンスに背を凭れてだらだらしている3人に向けて突き出す。
馬鹿は高い所が好きだっつーから、迷いもなく屋上へ来たら、案の定だ。
ドアノブに手を掛けたら違和感を覚え、手元を見ると異様なまでにひん曲がっていた。
力を込めて引くとそいつは簡単に取れた。
ん、と無言でアカが隣の眠そうに目をこする真央を指差す。
っとに足癖悪ぃな。
真央の足元にしゃがんでタバコをふかすジョーの隣に行き、フェンス越しに景色を見渡した。
「ここら辺学校多いな」
距離はあるが、正面に見えるのは華未女子高校、そこから右斜めにはスポーツがそこそこ強いらしい渋宮高校、さらに豆粒程度にしか見えないが、左斜め方向には坊ちゃん校の青日学園高校がある。
「ようやく高校生だぜ!!女作ってヤリまくんぞ!!!」
前方にある華未女子を真っ直ぐ見据えて唐突に叫んだアカ。
「テメーは猿か」
「んだよ。そういうお前は三股だろ」
噛みつく勢いのアカにジョーはチッチッと人差し指を振った。
「五股だ」
ジョーの勝ち誇った顔にアカは「うぜー!!」と叫んでフェンスをガシガシと蹴り付けた。
平気で短ランを着てしまう所は別として、長身で男前の顔と女の扱いが上手いジョーはモテる。
16歳にしては大人びた性格と雰囲気はいいけど、悪い事に年上好き。五股中、3人は人妻。
「つーか、梓鶴。お前いい加減会わせろよ」
気が済んだのか、ジョーの隣に座ったアカが俺に話をふった。
「あ?」
唐突な問いに間抜けた声が出てしまった。ジョーと真央の目も俺に向けられている。
「何だよ、突然…」
フェンスの金網を掴んでいた左手。その指に嵌る輝くものをアカに指差された。
「彼女だろ?」
「えー、それ聞いて良かったのかよ。わけわかんねー」
あっけらかんとしたアカの声に、隣に居た真央が不機嫌になった。
何度か指に3人の視線を感じてたけど、何も聞いてこないから俺自身も何も言わなかった。
聞かれても困るけど。
「会わせろよ」
興味津々のアカ。
こうなったアカはしつこいし超メンドイ。
「別に会う必要ねーだろ」
「はあ?カノジョ居るからって調子乗ってんじゃねーぞ!」
「乗ってねーって」
つーか彼女じゃねーし。
「お前、アレだろ。カノジョが俺に惚れちまうかもとか思ってんだろ!」
「プッ」
「真央!テメー何笑ってんだよ!!!」
「ふー…、さてと。うるせぇのは置いて帰るか」
ジョーは短くなったタバコを地面に押し付けて消すとカバンを掴んでドアへと向かった。梓鶴も騒がしい真央とアカの声を背に後に続いた。
end
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