[携帯モード] [URL送信]

奥様は×××




最悪な事態を想像しそうになる思考を何とか引きとめ、もう一度呼ぼうとした時だった。
微かに聞こえた声。

「…ず…、かず、ぁッ…ん…!」

梓鶴!!!何処??

家中のドアというドアを開けるが梓鶴の姿が一向に見えない。
焦りと不安で押しつぶされそう。
そして寝室のドアを開けて叫んだ。

「梓鶴!!!」

何処だよ、梓鶴、返事しろよ!!

「和、也…ッ!!」

「梓鶴!?」

部屋をザッと見渡したが姿は見えない。でも声がしたのは確実。

俺は部屋の中央に置かれたセミダブルのベットに近寄った。すると、ベットと壁の間のスペースで動くものが…。

「梓鶴…?」

「和也!!」

「しづ…ッ……る……?」

そこに居たのは仰向けに横たわる梓鶴と、その梓鶴さんの上に覆いかぶさるように乗っかる………犬。
しかも大きい。そうだな…、確か、ゴールデンレトリバーとかいうやつ…。

「え゛!?!?犬!?!?何で!?!?」

「ワンッワンッ」

「説明、すっから…早く退けて…」

梓鶴の上に乗っかる犬は、梓鶴の顔をべろんべろん舐めていた。








「で?じゃぁ、こんなにお家がドロドロでびしょびょなのはお犬様を洗ったから…だと」



コクリと頷く梓鶴。

あれから犬を梓鶴から引き離し、とりあえず風呂場に連れて行き、出てこれない様に鍵を掛けた。
そこまでする間も犬は中々梓鶴から離れようとせず、ちょっと目を離すと直ぐに梓鶴を押し倒し、襲い掛かろうとする。
「俺の梓鶴に何してんだ!!」って何回怒鳴ったことか。
クソォ。梓鶴も梓鶴だ。犬まで誘惑するなんて、どんだけ可愛いんだ。

梓鶴が言うには、学校帰りの道端でうろうろしている犬を見つけて、近寄って見ると首輪は付いているが、名前や住所などが一切なく、困った末家に連れてきたと言う。
犬は泥だらけで、とりあえず洗おうと決めたは良いが、意外と力が強く、しかも落ち着きが無くて汚れと、泡と、水を身にまとったまま逃走。
部屋中を駆け巡り、あのような結果になったらしい。





[*前へ][次へ#]

4/6ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!