奥様は×××
4
最悪な事態を想像しそうになる思考を何とか引きとめ、もう一度呼ぼうとした時だった。
微かに聞こえた声。
「…ず…、かず、ぁッ…ん…!」
梓鶴!!!何処??
家中のドアというドアを開けるが梓鶴の姿が一向に見えない。
焦りと不安で押しつぶされそう。
そして寝室のドアを開けて叫んだ。
「梓鶴!!!」
何処だよ、梓鶴、返事しろよ!!
「和、也…ッ!!」
「梓鶴!?」
部屋をザッと見渡したが姿は見えない。でも声がしたのは確実。
俺は部屋の中央に置かれたセミダブルのベットに近寄った。すると、ベットと壁の間のスペースで動くものが…。
「梓鶴…?」
「和也!!」
「しづ…ッ……る……?」
そこに居たのは仰向けに横たわる梓鶴と、その梓鶴さんの上に覆いかぶさるように乗っかる………犬。
しかも大きい。そうだな…、確か、ゴールデンレトリバーとかいうやつ…。
「え゛!?!?犬!?!?何で!?!?」
「ワンッワンッ」
「説明、すっから…早く退けて…」
梓鶴の上に乗っかる犬は、梓鶴の顔をべろんべろん舐めていた。
「で?じゃぁ、こんなにお家がドロドロでびしょびょなのはお犬様を洗ったから…だと」
コクリと頷く梓鶴。
あれから犬を梓鶴から引き離し、とりあえず風呂場に連れて行き、出てこれない様に鍵を掛けた。
そこまでする間も犬は中々梓鶴から離れようとせず、ちょっと目を離すと直ぐに梓鶴を押し倒し、襲い掛かろうとする。
「俺の梓鶴に何してんだ!!」って何回怒鳴ったことか。
クソォ。梓鶴も梓鶴だ。犬まで誘惑するなんて、どんだけ可愛いんだ。
梓鶴が言うには、学校帰りの道端でうろうろしている犬を見つけて、近寄って見ると首輪は付いているが、名前や住所などが一切なく、困った末家に連れてきたと言う。
犬は泥だらけで、とりあえず洗おうと決めたは良いが、意外と力が強く、しかも落ち着きが無くて汚れと、泡と、水を身にまとったまま逃走。
部屋中を駆け巡り、あのような結果になったらしい。
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