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犬馬の心






感情を抑えきれなくなった俺は構わず怒鳴る。

「やはりとか言ってたけど、あんたは何を知ってんだよ!?!?」

「生徒会は、生徒を統治するためにあるんです。僕は彼に関する噂が本当か確かめる責任がある」

「噂…?」

「彼が校内で売春をしていると」

ば、売春……!?!?!?!?
あまりの衝撃に声が出ない。
そんな馬鹿な…。家出中の不良娘じゃねーんだぞ…。

「信じられないといった顔ですね。あるんですよ、男子校でも」

言葉の出ない俺を取り残し、先輩は続ける。

「まだ噂の範囲です。たった今、実際に彼の性行為を目撃したばかりですが金銭のやり取りを見た訳ではありません。校内で性行為に及ぶ事は別に法律違反でも校則違反にも表記されていませんので、僕が彼を退学処分にする事はないです」

今は、と付け加えて俺の腕から逃れた。

「…確かに、俺も見た。ら、蘭が誰かとヤってるとこを。…でも、金銭のやり取りとか…、そういうことの前に…」

「その前になんですか?」

責め立てるような冷たい声で先を促す。

「う、上手く言えねぇけど、…好きな奴とヤってんのかもしんねぇだろ!!!お互いが想い合ってて、それでああなってんじゃねぇのかよ!!」

自分の言ってる事が恥ずかしくて、最後には声を荒げてしまった。これでは幼稚さ丸出しだ。
だけど…。だけど、俺にはそうとしか考えられない。セックスってそういうもんだろ……?

下を向いた俺に聞こえたのは先輩の嘲笑だった。

「変わってる。君は変わっていますね」

「あ?」

「では何故、貴方は此処で待機させられているのですか?他の生徒が入ってこないように、見張り役だからじゃないんですか?」

「そ…それは…」

確かにそうだ。もし、恋人に会いに行くのであれば、態々俺がついて来る意味はない。むしろ邪魔だ。
言葉に詰まった俺に先輩はため息を吐いた。




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