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犬馬の心







「痛ッ!ちょ、叩かないでよ」

「うるせえ。このヘンタイ」

「はぁ?イ・マ・サ・ラッ。つーかんなに嫌がらなくてもいいじゃん」

「自分で出来るって言ってるだろ」

そう言うと建明さんは俺の手から濡れタオルをひったくって背を向けてしまった。ちぇっ、つまんねぇー。しかも俺が居るからか絶対に服を脱ごうとしない。服を着たままもぞもぞと拭いている。
じっと見つめていて、俺はあることを思いついた。
そっと背中に近づいて建明さんの両方のわき腹を掴み、一気にくすぐる。

「すきありッ」

「うわッ!!タケル、てめっ!!!」

くすぐりに弱いのか建明さんは悲鳴を上げながら身体を捩ってベットに倒れこんだ。すぐさま反転させてマウントポジションを取る。

「へへッ。残念でしたぁ」

「退けよバカ」

下から睨まれるけど、こっちは建明さんの上に乗ってるわけだし、俺の方が力があるから絶対に逃げられない。

「遅いよ」

「やめろッ!タケルッ!!!!」

ちょっと大げさなんじゃないかってくらいの建明さんの悲鳴に似た声。けれど完全に調子にノっていた俺はそれを無視してバッとロンティを巻くし上げた。
予想通りの平な胸板と無駄な肉のない引き締まった腹筋。

「ポロリいただきまぁ―――」

ちょっぴり油の匂いの混ざる建明さん自身の香りが鼻に触れた。
この匂いが好き。いつもなんかしら料理の匂いがする建明さんが好きだから。

「………」


けれど、俺の知らないものも沢山あるわけで。今日は建明さんの生乳首を初めて拝む、吉日。
今日まで生きててヨカッタァとか叫んじゃおうかなって思ったんだけど、その貴重な乳首より―――


乳首、より――


……彼の肌に付けられていた無数の赤い斑点に目を奪われた。

脇腹、鳩尾、よく見れば鎖骨の辺りにもある。もちろん、胸にも。








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