犬馬の心
2
「ねぇ、手伝うよ?」
「しつけぇ。つーかぜってぇこっち見んなよ」
むぅ。しつこいって酷い。そんなの人にやってもらった方が早いに決まってるじゃん…。
っていうか…。
いくら見てないからって言っても気配とか雰囲気とかでこっちまで変な気持ちになってくる。
(うぅ…、どうしよ。最近シてないから僕もやばいかも…)
腰に巻いたタオルをぎゅっと掴むけど、一度そういう気持ちになってしまうとなかなか消せない。
どうしよ…。どうせ犬真も向こう向むいてるから分かんないよね…。
そっとタオルから離し、自身へと手を寄せる。
「なぁ」
「へッ??」
突然話しかけられ、昂ぶり始めた自身に触れそうになった手が寸での所で止まった。
「な、何?」
「…背中」
「え?」
「……背中…触っててくんね…?」
ぼそりと呟かれた言葉。
え?さする…?
どういうことか全く分からなくて思考が停止する。
なかなか返事をしない僕に犬真は言葉を続けた。
「おめぇの手…柔らけぇんだよ…」
「あ……、うん。」
恥ずかしいのか俯いている犬真の顔は見えないけど、耳が真っ赤になってる。
なんだか僕まで恥ずかしくなって俯いた。
(赤面って伝染するんだ…。初めて知った)
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