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犬馬の心
1分からないオトコ




蘭said→


何度も何度も、半ば自棄に成りながら人と重ねてきたこの身体はいくら洗っても落ちようのない汚れにどっぷりと浸かってた。

(そう思っていたのに)

僕を床に押し倒して上から覆いかぶさる男はそんな身体を綺麗だと言った。
下心もなければ、お世辞でもない。
咲き誇る花を綺麗だと言うように。夜空に輝く満点の星を綺麗だと言うように。

僕を真っ直ぐに見つめて言ったんだ。



犬真は僕が動かない事にようやく安心したのか、ぷは、と深く息を吐いて、張りつめていた緊張の糸が切れたみたいにゴロンと隣に転がった。

「お前なぁ…。俺がヤバい事になってんの分かってんだろーが」

「…ごめん」

「水」

「え?」

「水持ってこい。サウナあんだから水風呂あんだろ」

意味がよく分からなくて上体を起こして犬真を見た。
身体は紅潮して額には汗が滲んでるし、息も上がったままだ。

(あ…、そっか)

僕は急いで桶に水を汲みにいった。

冷水だし、いくらなんでも寒いんじゃないかなって思うけど犬真は「かけろ」って言う。
遠慮がちにかけたらまた怒られた。

桶じゃ足りなくて結局冷水のシャワーを直接頭からかぶり始めた犬真。
まるで修行僧のよう様に水をかぶり続けるから心配になるけど、手を出すなと言われちゃった手前、僕には何も出来ない。
だからと言って一人だけ湯船に浸かってるのも嫌で冷水をかぶり続ける犬真の後ろに座りこんでる。

「ねぇ、風邪ひいちゃうよ」

「うっせぇな。お前こそ風邪ひくから湯船に浸かってろ」

だって、そんなこと出来ないもん…。





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あきゅろす。
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