犬馬の心
8
「んとに…、オメェってやつは…。」
「何?」
「…はぁ。……俺は、お前を守るって約束しただろーが」
「それと何の関係があるのさ!?」
あー。頭痛い。限界だ。誰かこの馬鹿に教えてやってくれ。俺は今すぐにこの身体をどうにかしたい。
だけどそんな願いが叶うはずもなく、馬鹿に馬鹿と言ってやるのも俺しか居ない。
相変わらずの蘭を真っ直ぐ見下ろした。
「今ここで!俺とお前が身体つなげちまったら、約束した意味がねぇだろッ!!!」
「…な……」
ようやく意味が分かったのか蘭は驚いた顔で俺を見上げた。
「頼むから……
頼むから、大事にしてくれよ」
やっとの思いで口にした俺の言葉。
なんとかこれが蘭の心に通じてほしいと切に願う。
「な…何言って……。ぼ、僕の身体が今さらどうなったって…一度汚れたら関係ないもんッ!!!!」
くそッ。なんつう頑固野郎だ。
でも怒鳴り返した蘭はあまりにも悲しい顔をしていて、こっちまで苦しくなる。
俺は蘭の全部を知ってるわけじゃない。むしろ知らないことのほうが多い。
だけど…。だけど知ってる事だってあるんだぜ。
「…綺麗だから。……おめぇの身体はすっげぇ綺麗だ…」
ほら、今だってそうだ。水滴がついたお前の肌は光に照らされてきらきらしている。
普段だってその透き通るような色白の肌はすっげぇ綺麗だ。
それを、俺は知ってるから。
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