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犬馬の心







「んとに…、オメェってやつは…。」

「何?」

「…はぁ。……俺は、お前を守るって約束しただろーが」

「それと何の関係があるのさ!?」

あー。頭痛い。限界だ。誰かこの馬鹿に教えてやってくれ。俺は今すぐにこの身体をどうにかしたい。
だけどそんな願いが叶うはずもなく、馬鹿に馬鹿と言ってやるのも俺しか居ない。
相変わらずの蘭を真っ直ぐ見下ろした。

「今ここで!俺とお前が身体つなげちまったら、約束した意味がねぇだろッ!!!」

「…な……」

ようやく意味が分かったのか蘭は驚いた顔で俺を見上げた。


「頼むから……
頼むから、大事にしてくれよ」


やっとの思いで口にした俺の言葉。
なんとかこれが蘭の心に通じてほしいと切に願う。

「な…何言って……。ぼ、僕の身体が今さらどうなったって…一度汚れたら関係ないもんッ!!!!」

くそッ。なんつう頑固野郎だ。
でも怒鳴り返した蘭はあまりにも悲しい顔をしていて、こっちまで苦しくなる。

俺は蘭の全部を知ってるわけじゃない。むしろ知らないことのほうが多い。
だけど…。だけど知ってる事だってあるんだぜ。



「…綺麗だから。……おめぇの身体はすっげぇ綺麗だ…」



ほら、今だってそうだ。水滴がついたお前の肌は光に照らされてきらきらしている。
普段だってその透き通るような色白の肌はすっげぇ綺麗だ。

それを、俺は知ってるから。





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