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犬馬の心







「ちょっと、何???犬真???」

突然抱きしめられた蘭は戸惑い、腕から逃れようと暴れる。
そうなればこっちも余計に強い力で押さえ付けないとならない。だが密着したままでいるのも限界が近い。

俺は小さく深呼吸して次の動作に移った。
すばやい動きで身体を離し、すぐさま立ち位置を入れ替えて大理石の床に蘭を押し倒す。
蘭から声が漏れたが、構わず覆いかぶさるように上から肩を押さえつけた。
手荒な真似をして悪いが今の俺には気遣う余裕なんて1ミリもない。

「…ッ、ハァ、ハァ、ハァ」

「何するの!?どいてよ!!!」

「…っせぇな。大人しく…しとけよ…」

「やだやだ!!離して!!」

じたばたと暴れる蘭。そうしたいのも分かるが俺はもう限界だった。


「動くなっつってんだろーがッ!!!!」


思わず出た怒鳴り声。あいにくここは浴室。大きな声が一層響いた。
蘭の肩もビクっと震える。

それでもこんなもんで引き下がる奴じゃない。
力強く俺を睨みつけて言い返した。

「僕は手伝ってあげるって言っただけじゃん!なんで怒ってんの!?僕、乱暴されるのは好きじゃないんだけど!」

「そう…じゃねぇ…」

「じゃぁ何?正常位がいいの?それなら早く言ってよ」

「だから…、ちげぇって…っ…。お前とは、ヤんねぇ」

「は?」

「俺は…こんな形でヤリたくねぇ」

「何…言ってんの?」

蘭は言われている意味が分からないようで眉を寄せて俺を見上げる。

「苦しいんでしょ?ヤろうよ。手伝うって言ってるじゃん」

(んで…わかんねぇんだよ…ッ!!)

頭も痛くなってきた。動機も収まらない。チンコも痛ぇ。もう余裕なんて何にもない。思わず怒鳴りあげた。

「馬鹿言ってんじゃねぇッ!!テメェがやろうとしてる事は手伝いでもなんでもねぇっつってんだよ!!」

再々の怒鳴りは流石に応えたようで蘭は俺を睨みつけるがうっすら目に涙が滲んだ。

「…ハァ、悪ぃ…。だけど…、…やめろって」

「なんでよ!」

怒られっぱなしで納得のいかない蘭のふくれっ面は子供のようにしか見えない。
こっちは身体がしんどくて仕方ねぇっつーのに。ホント我がままだし俺の苦労を全く分かってねぇ。





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