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犬馬の心







「ぁ゛ぁ…ッ、クソッ!!んで、俺だけ…んだよ…ッ!!!」

「あぁ、気付いてなかったんだ」

何がだよ。つーか気付いてたらこんな事になってるはずがねぇ!
もう声に出すのもしんどくて、いや、むしろ声にしようとしても別の声が漏れちまって口が開けられない。

「あの人さぁ、僕だけに角砂糖勧めたでしょ」

か…角砂糖……?

――『蘭君、この角砂糖よかったらどうぞ』――

そうだ。あいつは名指しで角砂糖を勧めてて…。
もらった蘭は………蘭は…………

『ありがとうございまぁす。犬真くんにも入れてあげるね?』

って……俺のカップに入れやがったんだッ!!!!!!!!!!!
しかもそのあと自分のカップに入れたところを見ていない。

(うぉおおお!!コイツぶっ殺す!!!!!)

全部蘭の所為じゃねぇか!!!んとにロクなこと起こさねぇなッ!!!!
15年間生きてきて俺をここまで追い込んだ奴は初めてだ。色んな意味で。

「ッ、お前のせいじゃねーか…ッ」

「え〜?そんなことないよぉ」

ぷぅっと頬を膨らませて拗ねる蘭。クソッ!ぜんっぜん可愛くねぇかんな!!んな風にブリっ子したって全然可愛くねぇかんなッ!!
声に出来ない俺は必死で睨む。でも相変わらず蘭には俺の睨みなんて効かないらしい。

「それにしても随分な時間差だね。まだ試作段階なのかなぁ?」

知らねーよ!!
だけど確かにそうだ。理科室から出てもう何時間も経ってるし、身体のダルさはあってもさっき背中を触られた時はこんな感じなんて無かった。

「しょうがないなぁ」

俺の様子に「はぁ」と面倒くさそうに溜息をついた蘭はあろうことかタオルの下に手を入れてきた。そこにあるものなんてひとつしかないッ!!
いや、正確にいえば1本と2個だけど!!
今触られたら完全にヤバい。ヤバいヤバいヤバいヤバい!!!

「オイ、やめろって、まじっ」

焦る俺とは裏腹に蘭はゆっくりとした手つきで俺の内腿を撫でる。
過敏になった身体がビクビク反応するのを明らかに楽しんでやがる。

「ちょ、やめ…」

その証拠に蘭は妖艶な頬笑みで俺を見上げてきた。

「…くッ」

蘭は手を離すことはしない。それどころか苦しむ俺の耳元に唇をよせて甘い声で囁いた。

「ねぇ…僕の中、試してみる?」




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