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犬馬の心







つい夢中になっていた蘭。
ハッと思い出した様に声を出した。

「…あ、ごめん。お風呂入んなきゃね」

「…お、おう」

しばらくお互いに無言で撫でられ撫で続けだったが俺達の目的は風呂に入りに来た事だ。
こんなゆっくりとした穏やかな時間も、蘭が俺の素肌に触れる事も今考えたら初めての事。それに気付いた俺達はなんだか恥ずかしくなってギクシャクしながら離れた。
服もまだ脱ぎ途中だったし。

なんとなく隣で脱ぐ蘭をチラ見した。俺の後ろに居るとすっぽりと隠れてしまうほど小さなコイツは肩幅も腕も手も何もかも小さい。

(…細せぇ)

それにやたら白くて筋肉筋とか皆無だ。本当にコイツ男か?って今さらながら思っちまう。
こんな男だらけの生活に女の様な体つきで、しかも可愛い顔をした奴が混ざっているとなれば注目の的になるのは当然。

(そりゃ、モテるわな…)




*******



タオルを腰に巻き、服を脱ぎ終わった俺は大浴場の扉の前で深呼吸した。
ついに…ついに俺は憧れの大浴場に入るのか。
テレビで見た銭湯の壁にはデッカイ富士山が描かれていたけど、ここにもあんのか??
ゴクリと生唾を飲み込み、引き戸に手をかける。

(…いざ…)

「早くしてよ」

「あ、ちょッ!!!」

ガラッ

感動を噛みしめながら丁寧に開けようと思ったのに後ろに居た蘭が引き戸の前に割って入り、さっさと開けてしまった。

「バカ野郎ッ!!」








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