[携帯モード] [URL送信]

犬馬の心







理科室独特の広い机に蘭と並んで座る。
ぼさぼさ野郎は準備室からマグカップを二つ持ってきて俺達に差し出した。
マグカップの中身はコーヒー。

(完全にお茶のお時間じゃねぇか)

こんな事ならタケルの話を聞いてやればよかった。ガン泣きしてたもんなアイツ。
今日はヤンキーの兄貴発言で、すでに俺の機嫌はよろしくなかった。さらにこの無駄な時間。
機嫌の悪さは最高潮だ。

そんな俺に対して目の前のぼさぼさ野郎は蘭が居るからか上機嫌だ。
野郎の長い髪の間から、微かに見える顔が緩んでいる事が腹立たしい。
楽しくお喋りしている蘭にも無性にイライラする。

(…んな奴にへらへらしてんなよ…)

完全なる八つ当たりでふてくされながら一人コーヒーを啜った。




「蘭君、この角砂糖よかったらどうぞ」

「ありがとうございまあす。犬真くんにも入れてあげるね?」

この教室に来てから初めて俺を見た蘭。
忘れてられてると思う程ぼさぼさ野郎と話していたくせに、まるで「私、気が利きます」とアピールをする女の様に俺のコーヒーに角砂糖をぽちゃんと落としてミルクも注いだ。
どうぞっと可愛く言いながら渡されたカップを受け取り、一口啜る。
苦味がミルクで緩和さたカフェオレと最後に溶け残った砂糖の甘さが口に広がった。

蘭は外面仕様のプリティーフェイスで微笑み、自分も目の前のカップに口を付ける。
その顔にぼさぼさ野郎の根暗顔もとろけた。

俺のイライラ度、プラス10。


お茶菓子にと持ってきてくれたクッキーを食べながら部活の話が始まった。
科学研究部という名の通り活動内容の殆どがここでの実験らしい。

(すっげぇ、どうでもいいけどな。)

世にいうオタクってのはこんな奴の事を言うのか?
ぼさぼさ野郎はやたら早口で、喋り出したら止まらない。しかも所々専門用語が混ざっていてチンプンカンプンだし。
なんつーか…興奮?あ、そうそう。興奮してんだよ。化学変化について。怖ぇんだけど。







[*前へ][次へ#]

3/36ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!