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犬馬の心







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今日は仮装パーティーでもなければ、制服フェチでも、コスプレイヤーでもないおにーさんは、正真正銘この学園のコックなんだと。
なんだかんだそのままダベってしまったよ。おにーさんのお名前は建明さんって言うらしい。
しかも迷子だと言うとよくある棒付きのキャンディをくれた。赤原に迷子センターは確かに存在する。出張型で建明さんのみだけど。俺が勝手に言ってるだけだけど。
みっちゃんに教えなきゃ。

「中坊でヤニなんか吸ってんなよな〜」

「ハイ、スンマセン。ってか建明さんは吸わないんスか?」

「おぅ。料理の味がわかんなくなるからな」

そういって笑った顔がなんだかとてもかっこよくてつい見入ってしまった。
料理、好きなんだぁ…。
コックやってるくらいなんだから当然なんだろうけど、初めて出会って少ししか話してない俺ですら今の笑顔が建明さんの気持ちを全て物語ってる気がして、とてつもなく格好よく見えた。
毎日だらだら過ごしてケツばっか追っかけてる自分とは違い過ぎる。まじ格好良い。

「お前もいい加減な所で辞めとけよ。歯が汚くなって彼女にも振られるぞ?」

「…いや、彼女とか居ねぇっスよ」

なんて、本当は彼女居る。ノリで付き合ったもんだから所詮遊びだし俺も合コン合コンって言ってる訳で居ないって言った所でなんの支障もないけど。
でも男相手に居ないって言う必要あるか?ないよねー、完全に。

だけど今の俺の頭の中はさっきの笑顔で一杯になっててどうしようもなかった。
女の胸の感触は覚えてても男の笑顔なんて頭に残んないっしょ。普通。


なんなの、俺。


バカに付ける薬はないとか、バカは死んでも治んないとか言うじゃん。
実際治んない。バカが言うんだから間違いねーよ。


しかも恋に落ちたバカはもう止まんねーから救いようがない。
原チャで満足してたくせに最早心はハーレー気分。もちろん隣りに乗せたい人はあの人。





そんな訳で、学園見学から帰った俺は合コンがあることも忘れて家に着くなりじい様に赤原に入れてくれと頼みまくった。
チャラチャラ頭を全剃するならと言われて「バッチコイ!!」と心では思ったけど流石に言えず、それ以外なら何でもすると土下座までした。
いくらなんでも全剃りはムリッ!服着んなって言われてるのと一緒だもんッ!

だけど赤原は坊っちゃん校で学力は決して低くない。
そんな所に通信簿の先生記入欄が万年「山崎君は元気があって良いです」の一行しかないバカが入るのは到底無理。







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