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犬馬の心
1猫西 蘭






「なぁ、お前の探してるものって校章とどう関係してるんだよ?」

蘭は寝転ぶのをやめて座りなおす。テレビを見ていたのを中断されたからかすこしムスッとした顔だ。

「犬真ってアクセサリーとかに興味なさそうだもんね」

「あ?まぁ」

「大半の生徒が知ってる事だけど、この学園の校章はある有名な宝石職人がデザインしたものなんだよ」

「なんだそれ。あ?だから制服がやたら高ぇのか!!」

合格通知とともに送られてきた学校案内の冊子を見た瞬間、俺と親父は呆然とするしかなかった。
なぜならそこに記された日用品リストの値段が明らかにオカシイものだったのだ。
桁が間違ってるんじゃねぇか?と何度も見直した。でも何度見ても変わらない。
「乱視かもしんねぇ、眼科行くぞ!!」と病院嫌いの親父に言わせたほどだ。
奨学金やなんやらで授業料はまかなえるものの日用品は自分たちで何とかしなきゃならない。
おかげで親父には当分頭があがらなかったぜ。
でもさすが金持ちの学校だ。たかが校章くらいでって気しかしないがそれもあり得る話なんだろ。

「んで?」

「その職人は既に亡くなってるってこともあって彼の作品は時価数百万にもなるものばかりなの」

数百万…。額が大きくて金額を言われてもピンとこねぇな。

「もし、その人の世に知られていない作品があるとすれば一体どれほどの価値があると思う?」

「そりゃやっぱすげぇんだろうな。数千万とかか?」

「数十億だよ」

「ははは、マジかよ。………って、はぁああああああ!?!?」

す、数十億だと!?!?一般人の一生に稼げる金が1億程って聞いたことがある。でもその十倍がアクセサリー1個!!!
一般家庭以下の稼ぎしかない親父。そんな奴の元で育った俺では親父と大差ない人生だっつーのは目に見えてる。つまり、たかがアクセサリー1個の十分の一にも満たない訳で……かなりむなしい。

肩をがっくりと落とす俺を蘭は下から覗き込んだ。

「そんな作品がこの学園のどこかに隠されてるって言ったら…どうする?」

「ま…マジで言ってんのかよ…?」

俺の言葉ににんまりと笑って一言。

「大マジだけど?」





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あきゅろす。
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