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犬馬の心






ゆっくりと近寄ってくる彼。もう逃げ場はない。
彼の手が優しく俺の腰に回された。

年は二つしか変わらないのに、標準的な俺と彼との身長さは頭一つ分ほどある。
わざわざ身をかがめて俺の耳に唇を添えた。
そして、いつもの低く落ち着いた声で囁かれる。


「……隼人、主人が居ない間もしっかりしてくださいね。……悪いことはすぐにわかるよ」

「…ッ…は…ッ」

呼吸が速くなり、乱れる。
粒となった汗が額を流れ落ちた。
そんな俺を見て満足したのか、浅見さんはにこりと微笑むとスッと離れて厨房の奥へと消えた。
その後ろ姿を見つめる。

…怖い…怖い怖い怖い。
逃げたい…逃げたい逃げたい。

もう開放されたい。



でも、



離れられない。





*******



犬真said→


ただいまの時刻はもう21時を回っている。
俺は行かなかったけどタケルは昼間に誕生日の話を出来なかったから夕食も食堂に向かった。
建秋の態度が少し気になるけど誕生日祝いの誘いには何の支障もねぇだろ。
俺が気にしてもしょうがねぇしな。

俺は風呂から出るとソファーに寝転んで寛ぐ蘭の隣に腰を下ろした。

「おい、蘭。分かったぞ」

「んー?」

見ていたテレビから顔を離して俺を見る。唐突に話を切り出したから少しばかり考えてから「あぁ、あれね」と言った。






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あきゅろす。
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