犬馬の心
10
息が耳に掛かる。脳に直接響く甘い声。
「今日はこぉんなに天気が良いのにチョーカーなんてしてて暑くないの?」
「…やめろって…」
お前がしろって言ったんだろって怒鳴りつけてぇ!!だが至近距離にあるプリティーフェイスを直視出来ない…ッ。
顔が熱くてたまらない。目の前にいる建明はぽかんとしてるし。
当然だ。こんな男同士の馴れ合う姿を見せられたら誰だって……。
と、思った瞬間、建明が口を開いた。
「お、お前……それ…何処で手に入れた…?」
「え??」
思わず聞き返してしまった。
建明は俺と蘭の絡みを見てぽかんとしていたわけじゃなかったのだ。
むしろそんな事はどうでもよくて、チョーカーがはっきり見えた瞬間、建明の顔が真っ青になった。
「建明さ…【キーンコーンカーンコーン】」
俺の声を掻き消すように鳴り響いた、昼休みの終了を告げるチャイム。
その音に建明はハッとして慌ただしく立ち上がった。
「予鈴だ!!お前ら勉強がんばれよ!!」
「は?ちょっ…」
呼び止めるが早口でまくし立てると脱兎のごとく厨房へと駆けて行ってしまった。
途中でタケルとぶつかったのか声が聞こえたけど、明らかに動揺した声色だった。
ぽかんとしている俺を他所に、建明の動揺ぶりをどこか満足げに見送った蘭がスッと俺から離れる。
「建明さん、どうしたんだ?」
瓶に入ったコーラを3本手に戻ってきたタケルに蘭はニッコリ笑うと、どうしたんだろうね?と業とらしく答えた。
「さぁ、僕たちも授業だよ。行こ?」
第4章 わんこ的道徳教育 終了
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