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犬馬の心







つーか、


蘭の奴早く答えろよ。


次の展開に中々進まないと思いきや、蘭は視線を斜め下に下ろし、口を結んだまま、何かを考えているようで未だに返答していない。
数秒そのままで漸く相手に向きなおったかと思いきや、また視線を下ろす。

(な、なにしてんだ…?)

蘭の中途半端な態度に俺の胸が無駄にそわそわする。はっきりしないからか?なんだか落ち着かなくて気持ちが悪い。

返答までの時間が何故かやたら重く、長く感じる。
確かに蘭は長い間を作っているがまだ1分もたってない。それなのにもう数十分も待っている気がしてしまう。
俺の花壇を掴んでいる手が湿る。自分では気づいていないけど、この時の俺は手汗をかくほど緊張していた。


蘭は再び相手に視線を戻すと、やっと頭を横にふった。
しかも今まで何故あんなに考えこんでいたんだ?と思わせるほどやわらかい笑顔で。

「違うよ」

待っていた言葉がようやく出てきて、無意識に力んでいた俺の全身からストンと力が抜け落ちる。

それからしばらく2人の会話は続いていたみたいだが、俺の耳には入ってこなかった。





「…あれ?犬真?」

「げッ」

名前を呼ばれて顔を上げると、蘭が俺を覗き込んでいた。
先ほどの出来事を頭の中でぐるぐると考えていて見つかった事に気づかなかった。
や、それより!!

「さっきのやつは??」

「もう帰ったけど。っていうか何?また盗み聞きしてたの?」

「ち、違ぇよ!たまたまだよ」

「はぁ?なんで犬真がたまたま花壇の前にしゃがんでるのさ」

「は…花占いしてたんだよ」

俺は慌てて、目の前の花を摘んで花びらをむしった。






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