犬馬の心
6
「ん…?」
「犬真?どーした?」
不意に目に入った人影。
タケルに教えようと中庭の中央にある噴水を指差す。
噴水の向こう側に人が居るくらいにしかわからないが、あの髪色と背丈はアイツに似ている。
「あれ…蘭じゃね?」
「えー?そうかぁ?」
タケルは身を乗り出して目を凝らすが、分からないようだ。ホラと促そうとしたとき、丁度建明がサンドイッチを持ってきてくれた。
「オラ。男子高生の腹にはこれだけじゃ足んないかもだけど」
「まじで!?サンキュー」
差し出されたサンドイッチより、建明の足に抱きついたタケル。
俺は二人の会話を背に、なんとなく噴水の向こう側が気になって近寄っていった。
噴水の影に隠れ、向こうからは見えないように様子を伺う。
(…やっぱり蘭だ。)
誰かと話している。
アイツ、また自分の色気使ってなんかしようってんじゃねーだろうな…。
水の音の合間合間だが、微かに聞こえる会話。
気になって耳を済ませた。
「ごめんなさい」
聞こえた第一声は蘭のこの一言だった。
(ごめん?何がごめんなんだ?)
噴水を囲う花壇に手をかけ、少し身を乗り出すと2人の顔がはっきり見えた。
俺の全く知らない男子生徒。
生徒は自信なさ気に口を開いた。
「あの、本当に…君が好きなんだ。一目見たときから、忘れられなくて…」
その言葉に耳を疑う。
好き?って……こ、これはもしや告白!?告白されてんのか、アイツ!!
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