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犬馬の心
1番犬犬真





それから約1時間後、いつものように風呂上りのような姿で出てきた蘭と自室まで戻ってきた。

蘭は前回と変わらずに上機嫌だが、俺はあの乱れた姿を目にして今までと同じ様には居られなかった。
ソファーに座り、黙ったままの俺を蘭は下から覗き込む。

「ねぇ、ご飯はぁ?」

「……」

「ねぇってばぁ。シカトー?刺青バラしちゃうぞっ?」

「………うるせぇよ」

ふざけた物言いに苛立ちが抑えきれなくなって低く唸るような声が出た。
蘭の前でこんな声を出したのも、敵意を宿した目で睨みつけるのも初めてだ。

俺の目を見て蘭は肩をビクっと跳ねらせて一瞬怯んだ。
だけど今はそんな事を気にする様な心保ちではない。

「…お前、あの部屋の奴と付き合ってんのか?」

蘭はその質問に一瞬キョトンとして、それから馬鹿にしたように笑った。

「はぁ?なんでそうなるわけ?あんなダサイ奴と付き合うとかありえない」

その答えで俺の心に大きな亀裂が入る。
幻滅だ、蘭。
噂ってやつはマジだったんだな。

「…お前、なんの気持ちもない奴とヤって金稼いでんだってな」

蘭の目が大きく見開かれる。

「は?……どういうこと?もしかして部屋に入って来たの!?!?信じらんない!!」

蘭は語尾を荒げてそう捲くし立てると、フイっと顔を背け、部屋から出ようと踵を返した。その腕を素早く掴んで引き寄せる。

「俺に見張りさせてたのか?」

「…別に。犬真に言う必要ない。」





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