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犬馬の心






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「先日は守を手伝ってくれたみたいですね。ありがとうございます」

「…いや、暇だったし…」

とりあえずゲームをやめ、胡坐から正座に座りなおした。
落ち着いた雰囲気の大人っぽい副会長様を目の前にして俺は緊張していた。
勿論人気者の彼が目の前に居るからとかではない。ファンじゃねーし。
ただ、副会長の堅実な雰囲気はこっちまでピシっとしていなければならないような心地にさせる。

(つーかなんで俺にまで敬語なんだ…?)

先輩は偶然ここを通りかかり、先日の出来事を吉住先輩から聞いていたらしく、お礼を言いたかったらしい。
後輩思いの良い先輩だ。
…美人だし。
男に美人と言うのも何だが、彼にはこの言葉がピッタリだった。

「君は何故ここでゲームを?」

徐に聞いてきた先輩。俺は曖昧に答えるしかない。
だってそんな理由は俺が知りてぇ。

「なんつーか…ダチを待ってるっていうか…」

「…友達、ですか」

(何だよ、このプレッシャーにも似た緊張感は…)

返答を復唱した先輩の目が妙に光った。
何?疑われてんのか…?
友達と言えるかは不明だが蘭を待っているのは本当だぞ。


耐え切れなくなって視線を外すと、先輩は俺の肩越しに目をやった。
後ろにあるのは蘭が入っていった部屋。


先輩はスッと立ち上がって部屋のドアノブに手を掛ける。

「ここは?誰の部屋ですか?」

「…さぁ?」





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