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犬馬の心






腕の中の吉住先輩の安全を確認しようと、顔を上げた。重なる様な体勢の為、顔と顔の距離が近く、鼻先が触れそうなスペースしかない。

「…う、…うん…。芹沢が受け止めてくれたから…」

「…?顔赤いッスよ。どっか悪くしたんスか!?」

(やばい!全部受け止めたと思ってたけど、どっかにぶつけちまったのか??)

吉住先輩の頬は真っ赤になり、目が少し潤んでいる。密着しているため、先輩の胸のドクドクと脈をうつ音が少しながら伝わってきた。

「や、その、び…びっくりして…」

どうやら怪我はないようで安堵のため息をついた。
俺みたいな強面と違ってせっかく綺麗な顔立ちなのだから傷が付いたら可哀想だ。

背中の棚や荷物をなんとか退かして吉住先輩を起きあがらせた。
ふと時計を見るとあれからかなりの時間が過ぎている。

(やべぇっ!)

先輩は心配して保健室に行こうと言ってくれたが、そろそろ戻らないと蘭が用事を済ませて出て来るかもしれないので丁寧に断って資料室をあとにした。



*******




(やっべぇやっべぇ!ちゃんと待ってなかった事がバレたら何させられるか分かったもんじゃねぇ)

背中の痛みを無視して急いで戻ると、丁度蘭が部屋から出てきた所だった。

「お待たせ〜♪」

何だか上機嫌の蘭。

「ん?なんか、良い匂いすんな」

「シャワー浴びたからかな?」

髪をさらっと払った蘭から良い匂いがした。

(なんでシャワー?その為にこの部屋に来た訳じゃねぇよな…?)

この部屋への用事が分からない俺はますますチンプンカンプンだ。




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あきゅろす。
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