犬馬の心
1『マテ』と『オスワリ』は基本でしょう
堅くて冷たい大理石の床に胡座をかいて約1時間……。
(ケツ痛ぇ。痔になったらぜってぇ蘭の所為だ)
誰も通らないし、時間を潰せる物も持ち合わせていない。
(ヒマ…。)
そんな俺の耳に届いた、ガサガサと紙の擦れるような音。
廊下の先に目をやると音の出所がこっちに向かってきた。
大量の紙の束…。
どうやら人が抱えて運んで居るようなのだが、抱えている量が多くて運んでいる人の顔が見えない。
(あぶねーな…)
どうなってんだと眺めていると運んでいる奴の足がもつれて紙のタワーがぐわんと歪んだ。
「わっ!わっ!」
ぐらっ
バランスを崩して左右に揺れ始める。俺はとっさに駆け寄ってタワーを抱き止めた。
「…っと、危ねぇ」
「わっ!悪い!!ありがとう」
「…いや…」
(ん…?こいつ、どっかで見たな…。あ…)
ひょいとタワーの横から顔を出したのはなんと生徒会メンバーの書記だった。
食堂で毎回目にするがこんな間近で見たのは初めて。
(…単品でも眩しいな)
キラキラのオーラを放つ書記につい見入ってしまった。
書記は黒髪の短髪で、短い前髪がかかるおでこには絆創膏が貼ってある。
(やんちゃ?やんちゃなのか?)
…それにしても、意外と小さい。蘭よりは小さくないが俺の鼻下くらいしかない。
「…お前、もしかして芹沢…?」
じっと見つめて何も言わない俺に書記が口を開いた。
「え?あ、あぁ。そうっスけど…」
「やっと見れたっ!!食堂を黙らせた強面っ!」
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