犬馬の心
1犬、始めました
(よし、こんなもんか)
ダイニングテーブルに並んだ朝食。
香ばしいアジのひらきの匂い、炊きたてのご飯、湯気の立つ味噌汁、味の染みた煮物、甘い卵焼き。
(我ながら完璧だぜ)
不本意ながら犬になって初の朝。
俺は早起きして朝食の準備に取りかかっていた。
(しっかし…蘭の変わり様には驚いた。まだ信じらんねぇ……)
優しく愛らしい微笑みは一瞬にして消え去り、「僕の犬」と言った悪魔の顔。それを思い出して身震いした。
「蘭、朝だぞ。そろそろ起きねーと遅刻しちまう」
シーン…
気を取り直して、未だに起きて来ない蘭を呼ぼうと部屋をノックするが返事がない。
(朝ご飯作らせといて自分は起きて来ねぇのかよ)
これ以上待てば自分も遅刻してしまう。
しびれを切らした俺はドンドンと強くドアを叩いた。
「オイ!蘭!入っちまうぞ」
するとキィ…と薄く開いたドア。
その隙間から恐ろしい形相の蘭が睨む。
「……………うるさい………。………入るな………。……死ね……」
パタンッ
(ちょ…超怖ぇ……)
って!違げぇ!!!!遅刻するっつーの!!!!
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