犬馬の心
7
犬真said→
「と…とりあえず…話、する?」と混乱しすぎてなんだかダサいナンパみたいなセリフを吐いた俺に蘭は素直に従ってくれた。
ソファーに座った蘭と対面するようにラグに腰をおろす。
(しかし…何から話せば良いのやら…。)
握り締めた拳は汗で湿ってるし、額にもうっすら滲んでる。
一番気をつけなくてはならなかった事をこうもあっさり見られてしまうなんて。
蘭は普段、全然帰って来ない同居人だ。おかげで半分一人部屋状態だったことで油断していた。
そわそわして一向に口を開かない俺に蘭が問いかけた。
「…犬真くんのソレさ、刺青…だよね?」
「あ、あぁ。」
「…本物?」
思わずピクッ身体が強張ってしまう。
全てを見られた手前、今更嘘なんて付けない。
俺は覚悟を決めた。
「あぁ」
見られてしまったことは消せない事実だ。
だが、俺自身はヤクザじゃないし、ここに居るからと言って蘭に迷惑をかける事になんてならない、かけるつもりもない。
ただ蘭さえ黙っていてくれたらなんの問題もなく過ごせる。
この学園に居られる。
俺は床に手を付いて人生初の土下座をした。
まさに……一生のお願い……。
「頼む!!!刺青がバレたら学園に居れなくなる…。それだけは免れてぇんだ!!」
帰る事になれば俺の努力が全て無駄になり、また喧嘩三昧の日々に巻き戻される。
そして今度こそ、俺は抜け出せなくなってしまう。
それだけはなんとしても避けてぇんだ。
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