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犬馬の心






しかし、誰に聞いても『似合いますぜ!』とか『犬真さん格好いいッス!!』と誉められた。
誰一人として無理してる様子もない。
ただ一人、何でソレ?と言ってくれたのが東だった。
ホント、お前は最高だよ。流石幼なじみだ。

(コレを入れたのはお前の親父だけどな)


『犬真、漸く完成したんだろ?見せろよ!……おぉ!すげぇな!!格好いいじゃんか!………でも、なんで…………』



「……………柴犬……?」

そう、燃えるような彼岸花の中央に居るのは天を駆け上る龍ではなくて、岩壁に佇む迫力と貫禄のある虎…でもなくて、耳をピンっと張り、丸くて潤ったつぶらな瞳で相手を睨み、牙を剥き出しにして今にも喰らい突きそうな、丸まった尻尾を持つ柴………………


「ってえぇぇぇぇぇぇ!?!?!?!?!?!?」



後ろを振り返ると、そこに居たのは俺の背中に目を釘付けにしている………蘭だった。

ここは学園の一室のバスルーム。
鏡の前で回想に耽っていた俺は上裸。



完全に……


………見られた…………!!!!!!!

(いつ起きたんだ!?!?)

いや、そんな事より見られてしまった。
尚も大きな目をパチクリさせて俺の背中を見つめる蘭。
その顔は豆鉄砲を食らった鳩の様に呆けている。

そりゃそうだ。
中央に描かれて居るのが柴犬だとしても、彫り師の腕は本物。
迫力はある。

いや、そんなことはどうでもいい!!刺青が学園にバレたら間違いなく退学決定。
どれほどヤクザではないと否定しても刺青のある生徒を置いておく学校なんてあるわけがない。





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あきゅろす。
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