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犬馬の心









俺の親父はヤクザだ。
そして東の親父も。
その繋がりで俺と東は知り合い、今まで兄弟の様に過ごしてきた。

ヤクザと言っても、親父2人は下っ端の下っ端。その辺のチンピラと余り変わらない。主な仕事は金の取り立て。
そんなんだから、ほぼ毎日どちらかの家で酒を飲んだり、パチ屋に行ったり、競馬に行ったり……。

特に自慢出来る所のない親父達。物心付いた時には既に母親は居なかったし。
でも何だかんだ4人で居るのは楽しかった。

そんな二人の親だが、なんの取り柄のない俺の親父と違って東の親父には1つだけ取り柄がある。

東の親父、横内太助(ヨコウチ タスケ)は親父等の組が属する緑龍会の専属彫り師なのだ。
会長、つまり大元のボスである瀬谷さんにその腕を見初められて引き受けたらしい。
普段は俺の親父と変わらない駄目親父だ。だから俺がこの事実を知ったのはつい最近だった。

横内の刺青は見る者を一瞬で引き込み、魅了する。ヤクザの間ではその名を知らない者は居らず、皆喉から手が出るほどその絵を欲しがる。
しかし、美しいものは数が少ない程価値が上がるもの。
少ない程より美しく感じ魅力が上がるもの。
そう、緑龍会の中でも横内の刺青を体に入れる事が出来るのは組長クラスの幹部の一握りのみなのだ。


…………そして、



俺の背中にはその横内太助の刺青がある。



だからと言って俺は幹部ではない。ましてや、さっきも言ったがヤクザでもない。
東に流されて族まがいのチームは作ったけども…。
そんな俺に何故、横内が刺青を入れたか…。

答えは簡単だ。
駄目親父2人の悪ノリ。
息子の誕生日に親父等の方がハシャいじまったのか知らねーが酔った際に東の親父が俺の親父に口走った事が始まりだった。

『あ゛ぁ?おめぇんとこのガキも5歳だァ?ウチと一緒じゃねーか!よし!俺が彫ってやるよ!』


そして最悪の誕生日が始まった。





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