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犬馬の心







先輩の言うとおり、2年の寮長は僕にゾッコン。姿を見られてはしつこく付きまとわれていた。
でも彼が寮長だと分かった瞬間、僕にとって彼がその辺の石ころではなくなった。

彼は寮長。
2年塔の全ての部屋を開ける事の出来るマスターキーを持っている。


もはや僕からは彼がマスターキーに見えた。


僕がちょっと相手をしてやったら簡単にスペアをくれたの。本当に単純。

僕が先輩の部屋からアルバムを持ち出したのは、生徒会メンバーの写真が欲しかった訳でも、小遣い稼ぎがしたかった訳じゃない。

(別にファンでもないし。むしろ嫌いだし)

だから引き出しに入っていた、生徒会メンバーの引き伸ばし写真はそのままにしておいたし。
その何枚ものストックが在ったからアルバムを持ち出した事は直ぐにはバレないと思ったけど、意外と早かったね。

(面倒くさい…。早く離して貰いたいのに…)

僕は小刻みに肩を震わせて、空いてる手で目を覆うと下を向いた。

「…クッ、ヒクッ…先輩…、酷いです…。僕そんな事してないのにぃ…」

「…蘭…。ごめん」

(ふふっ!男って単純。馬鹿ばっかり)

僕はトドメとしてうるうるな上目使いで見つめようとパッと顔を上げた。

「先ぱ…」

しかし、先輩の顔を見て止まった。
怒りの宿った目で、口の橋を上げて微笑んでいたのだ。

「…なんて言うと思ったかよ。来い!!」





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