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犬馬の心






僕は気付かない振りでやり過ごそうと、涼しい顔で通り過ぎる。
しかし、嫌な予感と言うのはどうも当たってしまうモノ。

「…ッ!」

案の定、すれ違い様に腕を掴まれた。

「待ってたよ。蘭」

(……この人は…)

相手の僕の腕を掴む力が、ぎりぎりと増して痛いくらいに締め付ける。
明らかな敵意の籠もった声と表情。
だけど僕は全く怯まずに素直に驚いた顔を作った。

「あれ??先輩!?もうっ、びっくりしたじゃないですかぁっ!どうしたんですか?」


相手はつい最近知り合った3年生だった。この前お部屋に呼ばれて少し遊んだ。

「どうした?じゃないよ。お前なんだろ?俺の部屋から持ち出した奴」

「えー?なんの事ですか??」

「こっちは全部分かってるんだよ。ひょっとしてお前の持ってる2年塔のマスターキーも盗んだのか?その可愛い顔でよ?寮長の奴、お前にゾッコンだもんなぁ」

(失礼だなぁっ!あれは盗んだんじゃなくてくれたのっ!)

先輩は怒りに歪む顔で、勝ち誇った様に言った。
僕はそんな先輩を心の中で嘲笑する。

(愚かな先輩)

決して顔には出さないが僕は必死に笑いを堪えていた。
残念ながらお前はあの寮長以下だよ。
もっと使える奴だと思ってたのに、僕の為になる物は何一つ持っていなかった。

僕の体に触れさせてやったのにさ。

だから僕が利用価値を上げてやったんだ。お前が小遣い稼ぎに使ってる、生徒会メンバーの載った卒業アルバムを僕が貰う事でね。





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あきゅろす。
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