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犬馬の心








便所に着いた俺は、はぁ…と渾身の溜め息を吐き、ベルトのバックルに手を掛けた。
だが次の瞬間、傷心の俺を更に追い込む出来事が起きた。
まさに追撃。


それは一番奥の個室から聴こえる微かな声だった。


「ん…ぁっ、だ、誰か…来ちゃうよォ…っ」

「声抑えねぇとな。そのはしたない声が聞かれちまうぞ?オラッ!」

「あぁんっ!!」


(…オイオイオイ。勘弁してくれよ……)

いくら同性愛を知らなかった俺でさえ、この鼻にかかった甘い声が何を示すのかは分かる。
抑えるどころかただ漏れの喘ぎ声に俺の尿意は一瞬にして去った。

「あっあっあっ、激しいよおっ、あぁぁ!!!」

相手の律動が激しいようで、喘ぎ声は益々デカくなる一方。
更にはパンパンッと肉のぶつかり合う音まで聴こえる。

(やべぇ…泣きそう……)

あまりの異様な音声に俺の心は折れそうだ。便所に響くこの声のみで容易に想像出来る“そう言う行為”は男女でやる事だと認識していたがそれは間違いだったのか…?
思わず耳を塞ぎ、俯きかけた。

(まじカンベンしてくれ…って…あれ?)

そんな脳内が混乱の最中、見えた一筋の希望…。

まるで女の様な喘ぎ声と激しい肉のぶつかり合う音、更にはグチュッグチュッと卑猥な水音の響き渡る便所という、最高にエッチな場面に居るにも関わらず、俺のチ○コは全く反応していない…。
むしろ萎えに萎えて通常よりふにゃふにゃな状態だ。

(こ…これは……!!!)






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あきゅろす。
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