犬馬の心 6 便所に着いた俺は、はぁ…と渾身の溜め息を吐き、ベルトのバックルに手を掛けた。 だが次の瞬間、傷心の俺を更に追い込む出来事が起きた。 まさに追撃。 それは一番奥の個室から聴こえる微かな声だった。 「ん…ぁっ、だ、誰か…来ちゃうよォ…っ」 「声抑えねぇとな。そのはしたない声が聞かれちまうぞ?オラッ!」 「あぁんっ!!」 (…オイオイオイ。勘弁してくれよ……) いくら同性愛を知らなかった俺でさえ、この鼻にかかった甘い声が何を示すのかは分かる。 抑えるどころかただ漏れの喘ぎ声に俺の尿意は一瞬にして去った。 「あっあっあっ、激しいよおっ、あぁぁ!!!」 相手の律動が激しいようで、喘ぎ声は益々デカくなる一方。 更にはパンパンッと肉のぶつかり合う音まで聴こえる。 (やべぇ…泣きそう……) あまりの異様な音声に俺の心は折れそうだ。便所に響くこの声のみで容易に想像出来る“そう言う行為”は男女でやる事だと認識していたがそれは間違いだったのか…? 思わず耳を塞ぎ、俯きかけた。 (まじカンベンしてくれ…って…あれ?) そんな脳内が混乱の最中、見えた一筋の希望…。 まるで女の様な喘ぎ声と激しい肉のぶつかり合う音、更にはグチュッグチュッと卑猥な水音の響き渡る便所という、最高にエッチな場面に居るにも関わらず、俺のチ○コは全く反応していない…。 むしろ萎えに萎えて通常よりふにゃふにゃな状態だ。 (こ…これは……!!!) [*前へ][次へ#] [戻る] |