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犬馬の心







犬真side→

やっぱり…友達を作るなんて無理なのかもしれない。


走り回って居た奴らがこっちに向かって来たと思ったら、案の定衝突。
そいつは細くてひょろっとした体格だったから衝撃で床に転がった。
自分が受け止めてやれば良かったと、謝るついでに手を差し出したがそれが失敗だったんだ。

こんなに大勢の前で怯えられたのは本当に久々で自分の考えが甘かった事を思い知らされた。

(……流石に落ち込むわ)

室内はざわめきを取り戻したが、視線は相変わらず痛い程に注がれる。



耐え難くなった俺は、カウンターに着くまでひたすら下を向いて歩いた。



「新入生の方ですね。ご注文は何になさいますか?」

カウンターに着く前に、シルバーフレームのメガネをかけ、黒髪をオールバックにした男が問いかけてきた。30代だろうか。
一見、何処のレストランにも居そうなウエイターかと思いきや、そこら辺のとは格がが違う。

(レストランなんて行った事もない俺でさえ感じる…。……この人は本物だ……)

声もそうだが、とでも落ち着いた雰囲気で上品な物腰。
ダブリエルを身に着けた彼から醸し出される大人の空気は、本当に高級レストランに来たような錯覚に陥りそうだ。
本当に給仕なのかと疑ってしまうほど洗礼された雰囲気を放っている。

「あ、えっと…」

彼の雰囲気に圧倒されつつも、差し出されたメニューを見れば、殆どが英語だかフランス語だかで書かれている。日本語といえばそのメニューの簡単な説明のみ。
しかも食材名なのだろうか、カタカナの羅列ばっかりだ。ヴォなんちゃら、とかツェなんちゃらとか。確実に一般的な食材名じゃない。

「…えっと…」

(やべぇよ…。全然分かんねぇ)





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あきゅろす。
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