犬馬の心
2
テーブルとテーブルの間をぶつからない様にすり抜け、相手との距離を確認する為に走りながら後ろを振り返った。
「へへーん!捕まえてみやがれ!」
「あ!前!!」
「え?」
ドンッ
当たり前たが、前方不注意で誰かにぶつかった。
その姿を見て腹を抱えて笑う友達。
怒りたい所だが、ぶつかった衝撃で尻餅を付いた為に、尻が予想以上に痛くて立ち上がれない。
「痛ぁっ」
「悪ぃ。大丈夫か?」
痛みに腰の辺りをさすっていると、頭上から落ち着いた感じのハスキーヴォイスが聞こえた。
更に、目の前に差し出された大きな手。
「あ、すみませ………ひっ!!!!!」
差し出された手を掴もうとして顔を上げた瞬間、僕は…………凍り付いた。
「ははは!前見て走らないからだ………うわあぁぁっ!!!」
呑気に笑いながら近づいた友達も僕が凍りついた原因を見て、悲鳴を上げて走り去ってしまった。
その悲鳴に、食事していた生徒達が反応する。
それまで騒がしかった食堂が一転、しーんと静まり返った。
何百と居る、全生徒達の目が僕らに注がれる。
だが、今の僕にはそんな事はどうでもよかった。
(ぼ…僕も逃げたい……)
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