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犬馬の心






テーブルとテーブルの間をぶつからない様にすり抜け、相手との距離を確認する為に走りながら後ろを振り返った。

「へへーん!捕まえてみやがれ!」

「あ!前!!」

「え?」

ドンッ

当たり前たが、前方不注意で誰かにぶつかった。
その姿を見て腹を抱えて笑う友達。
怒りたい所だが、ぶつかった衝撃で尻餅を付いた為に、尻が予想以上に痛くて立ち上がれない。


「痛ぁっ」


「悪ぃ。大丈夫か?」

痛みに腰の辺りをさすっていると、頭上から落ち着いた感じのハスキーヴォイスが聞こえた。
更に、目の前に差し出された大きな手。

「あ、すみませ………ひっ!!!!!」

差し出された手を掴もうとして顔を上げた瞬間、僕は…………凍り付いた。

「ははは!前見て走らないからだ………うわあぁぁっ!!!」

呑気に笑いながら近づいた友達も僕が凍りついた原因を見て、悲鳴を上げて走り去ってしまった。

その悲鳴に、食事していた生徒達が反応する。
それまで騒がしかった食堂が一転、しーんと静まり返った。
何百と居る、全生徒達の目が僕らに注がれる。

だが、今の僕にはそんな事はどうでもよかった。

(ぼ…僕も逃げたい……)





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