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犬馬の心






「…あ、あぁ。悪い。猫西、蘭。よろしく」

にこっと笑った猫西は小さな手を差し出して来て、俺も答える様に手を重ねて握手した。

「もう、びっくりしちゃったよ。帰って来たら知らない人が寝てるんだもん」

心地よい囀りの様な声を弾ませて、猫西は俺の隣に座った。

なんとも小柄で華奢な体。
喧嘩三昧で筋肉もあり、体格の良い俺とは大違いだ。
並んで座っているものの俺と猫西の目線は頭一個分ほど違う。

(こんだけ小せぇなら…余計……)

「こ…猫西。……お前は、その………怖くないか…?」

顔が怖いってのを自覚している俺からの精一杯の配慮。自分から言ってしまうのはかなり恥ずかしいが仕方ない。
そりゃ、これから一緒に生活していくんだからな…。始めが肝心なわけで思った事ははっきり言って欲しいし。
『怖くて顔見れない』って言われても流石にお面とかつけて生活するわけにはいかないが怖くないぜってのを態度で示すとかそういう努力は精一杯したいからな。

「ん?」

「……俺が、怖くねぇか?」

不思議そうな顔をしていた猫西だったが、俺の顔を見て質問の意味が分かったらしい。
まじまじと見つめられて緊張が走る。

「ここ」

ふと細くて小さな猫西の人差し指が俺の眉間に触れた。

(え?)

「シワ、寄ってる」

そう言うとふわっと微笑んだ猫西。

「……」


きゅん…


(……ッ、なんだコレ……)





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