犬馬の心
5
だからと言ってこの目を恨んでる訳ではないし、誰からもマトモに相手にされなかった訳でもない。
ただ、いい加減、サイクルから抜け出したかった。
気が付けば後戻り出来ない所まで来てしまっていた事に、初めて感じた“恐怖”。
『こんな生活のままで、俺の人生、終わっちまうのか…?』
幼なじみや仲間には悪いと思いつつ、内緒でこの全寮制の赤原男子高校に入学した。
本当ならいつものメンツと共に地元の馬鹿校に進学してるはずで中学と変わらない日々を過ごすんだろう。
そこに留まればずっと変わらない仲間と親友が傍にいる。楽しい高校生活が待ってるのは百も承知だった。
だけど、そんな事も含めて俺はそこから抜け出さなきゃいけないって思ったんだ。
(東(アズマ)…どうしてっかな…。今頃ガチギレだろーな…)
長年の相棒こと、幼なじみにも一切話さなかった。それを思うと少し胸がチクリと痛む。
しかし、全寮制に進学したのも、言わないと決めたのも、全ては自分。
気を取り直して、目の前に聳え立つ城の重たいドアを押し開けた。
*******
職員に言われた通りの道順で進むと、今回はすんなり自室に辿り着けた。
部屋のドアには2つの表札が貼られている。
芹沢 犬真
猫西 蘭
(ねこにし…?珍しい名字だな)
まずは同居人と仲良くならなくてはと、以前から心の中で何度も練習したフレーズをもう一度確認して、意気込んでドアを開けた。
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