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犬馬の心






「あ…、あぁ。おま……き、君の部屋の鍵だ。へ、部屋は学園寮の1年塔…です…」

じりじりと後退り、俺との距離を開ける職員。
態度のデカかった口調も最後には丁寧になってしまった。
顔は青ざめ、額からは汗が流れている。更にはガクガクとみっともない程膝を震わしていた。

(そこまでビビられると俺だって傷つくだろーが)

だが、ここで少しでもこの苛立ちを見せてしまえば完全に俺が脅しを掛けたようになってしまう。

(平常心平常心)

「どーも」

落ち着き払った声でそう言ってみたものの相手との距離は縮まらない。
いつもこうだ。
はぁ…とため息を思わず声にしてしまった。静まり返ったこの場では思いの外響いてしまい、職員はビクッと肩を震わせて冊子を俺に押し付ける様に渡すとバタンとドアを閉めた。

ガチャガチャッ

(カギまで閉めるこたねーだろ…)

「はぁ…」

もう一度溜め息をついて、渡された冊子を手に学園の正面入り口へと向かった。



『恐すぎる』

会う人会う人に幾度となく言われた言葉。俺を見た瞬間に震え上がり、目を泳がせる人々を何度見たことか。

原因はこの素晴らしく目つきの悪い目。
更に元々仏頂面で笑ったりするのが苦手な事が初対面の人を怯えさせる事に拍車を掛ける…らしい。

この鋭く、視線で相手を射殺す様な目は父親譲り。

この目のおかげで幼い時から幾度と無く喧嘩をふっかけられた。
俺の意志とは関係なく昼夜を舎かず巻き起こる喧嘩によって、当然のごとく鍛えられていった俺は、雑魚を倒せばそいつの上が仕返しにやってきて、それを倒せばまた更に上がやってくると言う『喧嘩のサイクル』に見事にハマってしまった訳だ。

喧嘩によって出来る怪我は俺の印象を一段と悪くすると言うオプション付きで。







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