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堪えきれず流れた涙。
勢いで喋ろうとするのに嗚咽がもれて邪魔をする。
「うぅ…っ…い、壱の馬鹿!!で、出て行くってなんだよ…っ!?」
「なんだよって…。もう一緒になんて居れないだろ…」
「なんで?なんで一緒に居れないんだよ!?」
肩を掴んだ手に力が込もって壱を揺さぶった。ギシギシとベッドが軋む。
壱は覆い被さる俺の胸ぐらを掴んで怒鳴った。
「…は?分かれよ!!俺はお前をただの幼なじみだって思った事なんか1度もないんだぞ!!お前とは違うんだ!!」
「……うぅっ。分かんない!分かんない分かんない!!俺は壱とこれからもずーっと一緒に居るんだ!!壱が居ないと俺は何にも出来ないし、苦しくて生きてけない!!」
「…………」
駄々をこねるように叫んだ俺を壱は急に黙って凝視している。
「なんだよ!?ふっ…うぅ、何て言えば良いのかんなっ…。どうしたら分かってくれるの…ヒクっ…」
「…春?」
「分かんないよ!壱が俺と居れない理由も、俺が壱に告られて、キスされて嬉しかったって思った理由も分かんない!!堤は壱が教えてくれるって言ってたのに!!」
「……春…」
壱は驚いた顔で呟くように俺の名前を呼んだ。
「春…嬉しかったのか?」
俺は漏れる嗚咽を唇を噛んで堪えながら頷いた。
視界に映る壱の顔は涙で歪んでいて、俺は今更ながら泣いている顔を見られたくなくて俯こうとしたけど俯けなかった。
壱の顔が真っ赤だったから。
「…見んな」
恥ずかしいのか両手で顔を覆った壱。
俺は壱の急な赤面に目が離せなかった。
壱は顔を横に反らして覆い被さる俺を弱い力で押し返し、退かそうとする。
俺は壱の顔を凝視したまま流されるように退いた。
ベッドの上で向き合って座った俺と壱。
「お前…、俺の事好きなの?」
好き?
壱に言われた「好き」とキスを思い出すと今も俺の心は嬉しいと感じてる。胸が温かくて幸せだと感じてる。
悲しい表情をした「好き」とキスだったけどそれでもすごい嬉しかったんだ。
もっと聞きたい。
もっと……触れてほしい。
…あ。そっか。
俺、分かった…
「…うん」
今度は本当に顔を見られたくなくて俯いた。
わ…なんか、すごい恥ずかしい。
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