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そいつはただの紙切れで、たったの10文字のくせに若干8才の俺の心を壊すには十分すぎる破壊力だった。




放課後、春を昇降口に待たせたまま忘れ物を取りに誰も居なくなった教室に向かった。


座席が出席番号順に列んでるから春の席の前が俺。


教室の後ろのドアから入ったから春の机の中が見えたんだ。
そこにはひっそりと忍ばされた手紙が入っていた。




嫌な予感がした。




俺は駄目だと思いながらも、可愛く折られた手紙を見ずにはいられなかった。


ドクドクとうるさい胸。
息がしづらい。


少し震える手で折り目を解いていく。

そこには歳相応の字でバランスなんかも悪いけど、どこか可愛らしい一文があった。



『はるくんが大好きです』


案の定だ。



くしゃっ


俺は手紙を握りつぶす音と自分の心にヒビが入った音を重ねた。




何なんだよ…?
大好き?誰が?誰を?

春をちゃんと分かってるのは俺だけだ。
何を知ってて好きとか言ってんだよ!?
ふざけんなっ!!!




俺のヒビの入った心から熱くて黒い液体みたいなものが出てくるのを感じた。

今思えば嫉妬したんだ。
春を特別に想って良いのは俺だけだって。



そして手紙に思い知らされた。


春に抱く俺の気持ちは幼なじみとか、友達ってものじゃないって。





春が好き。誰にもとられたくない。






でもそれは普通じゃない。






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