９
「やっぱ、引くよな…」
壱はうつむいたまま言ったから声が少しくぐもってる。
「や、驚いたし、まだちょっとパニクってるけど…、引いては…ない」
目と頭がが一瞬で冴えた。
すっげえぱっちり。
びっくりして少し心臓がうるさい。
こういうのを聞いたときの自分のリアクションとか、どう思うんだろ？なんて当たり前だけど考えたこと無かった。
でも引きはしないんだな。
自分自身の事だけど新たな一面を知った感じがする。
「そか…。良かった」
顔をやっとあげた壱はほっとしたようにつぶやいた。
「実はもっと前から堤に話そうかなって何回も考えてた。でも引かれたらどーしよ、とか思って」
それから壱の話をただ相づちをうちながら黙って聞いた。
最後に何で俺に話してくれたの？って聞いたら、堤なら受け止めてくれんじゃねーかなって思ったからだって。
そんときはいつもの無邪気な壱に戻ってた。
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