冬「忘れな書簡」
<三>
木原進は嫌な音を立てて開く古びたドアを開け、小さな自分の"城"に帰って来た。
六畳一間というやや時代錯誤気味な間取りのこのアパートは、母の頃からあったらしい。
木原の真上の部屋は、前の住人が出ていった時に少し改装したらしく、白い床の洋室になっていた。
木原は年季の入った卓袱台にビニール袋を置くと、畳の上に無造作に放り出してあったリモコンを掴み、テレビの電源を入れた。
テレビの横にあるアナログ時計の短針が指しているのは十一を少し過ぎた辺りだ。
木原はいつも見ているニュース番組を観ようとボタンを押した。
……その時。
どん、と鈍い衝撃があった。
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