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(ただしドS流)
<三>

「ったく、なんで俺が……」

土方は一葉の消えた財布を見ながら溜め息を吐く。

悪い事に、カブキランドの入場料はややお高めに設定されていた。

よりによってこんな日に。
今日はせっかく誕生日だからと近藤さんの計らいで休みをもらって、一日ゆっくりしてマヨネーズをたらふく食べる予定だったのに。

「土方さん、カブキワンコがいやすよ、ほら」

そう言って総悟が指差したのは、例のパッとしない犬だ。
カブキワンコという名前らしい。
実に安直だ。

土方がそんなことを考えている間に、総悟はカブキワンコに手を振りながら近付いて行く。
おいおい、良い歳こいて勘弁してくれ……そこまで考えて、土方は総悟がまだ十代なのを思い出した。
……そんなガキにいつもコケにされているのか、俺は。

「おーい、そこのブサ犬、俺にも寄越せよ風船」

総悟は尚も近付く。
だが、カブキワンコの様子がどうもおかしい。
総悟が近寄れば近寄るほど、カブキワンコはずりずりと離れて行くではないか。

「どうしたんでィ。怖くないよー」

いや怖えーよ。
なんだその黒い笑みは。

カブキワンコの中の人も危険を察したのか、ついに総悟に背を向けて何処かへ歩き出してしまった。

「あ、ちょっと待ってくだせェ、桂さん!」

総悟の呼び掛けにカブキワンコが振り返った。
一瞬、世界が静止する。

そして次の瞬間、カブキワンコと総悟が同時に走り出した。

……え、桂?

「土方さん、追いやしょう!」

「えっ、ちょっと、」

「早く!」

総悟は園内に逃げるカブキワンコを追いかける。
着ぐるみを着たままではやはり走りにくいのか、カブキワンコが走りながら頭部を脱いだ。

だがーー。

「桂!」

その黒髪には見覚えがあった。
やはりかつての攘夷の生き残り、桂小太郎だ。

「あンの野郎……!」

土方も総悟について走る。
何の因果で誕生日にこんなことをしているのかはわからないが、こうなった以上は。

あの野郎、今日こそ捕まえてやる!



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あきゅろす。
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