(ただしドS流)
<二>
「……オイ総悟、なんだこれ」
「見てわかんねーんですかィ。カブキランドでさァ」
「見ればわかる」
土方が連れて来られたのは、かぶき町にあるテーマパーク、カブキランドだった。
入場門の向こうでは、パッとしない犬の着ぐるみが子供らに風船を配っている。
「さ、土方さん。チケット買ってくだせェ」
「は?」
「今日、何の日か知らねーんですかィ。子どもの日でさ。子どもの日」
「……だから?」
「だから、今日は子供に優しくするんでィ」
「はァ!?」
いや、ちょっと待て。
誰が子供だ。
というかそもそも、子どもの日に子供の成長を願ったりする習慣はあっても、子どもの日だからと子供に優しくする習慣は日本にはない。
「……土方さん?」
総悟がずい、と顔を近付けて来る。
突然のことに、土方は思わず一歩後退った。
「……嫌ですかィ。俺と遊ぶの」
なんでそんな悲しそうな顔するんだよ。
泣きてーのはこっちだ。
だがそんな総悟の表情を間近で見て、不覚にも土方は見とれてしまった。
ーーくそ、綺麗な顔してやがる。
そして次の瞬間、
「え、うわっ」
抱きつかれた。
待て待て待て! なんだ、なんだこの急展開!
「総悟、ちょっと待て、離れ……」
「くっ」
「……?」
「くくくっ、ばーか!」
ゲラゲラ笑いながら総悟が離れる。
その手には、土方の財布が握られていた。
「あ、てめえ!」
「流石土方さん、チョロいもんでさァ」
やられた。
あれこれ考えた俺が馬鹿だった。
総悟が俺を……なんて、そんなことあるわけがない。
スタスタとチケット売り場へ向かう後ろ姿にほっとすると同時に、何故か一抹の寂しさが土方の心をかすめた。
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