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夏「蝉の時雨とサイダー瓶」
<二>

「ねえ」

夏乃と恭一は昨日と同じベンチで、昨日と同じサイダーを昨日と同じように飲みながら、昨日と似たような蝉の声を聞いていた。

「私のこと、なんて呼ぶ?」

「……は?」

「いやだから、呼び方。なんて呼ぶ?」

「なんて呼んでほしいわけ?」

「えっ?」

どうして、この恭一という少年はまっすぐに人の目を見るのだろう。

何も言えなくなって、それでも何か言うまでは逃げられない、夏乃の一番苦手な視線。

夏乃はこの瞳に、会ったことがある。
それが誰だったのか、どのくらい前のことなのか、ちっとも覚えていない。

けど、確かに覚えている。
夏乃よりも遥かに背の高いひまわりが咲いている場所で、夏乃は誰かの腕に抱かれていた。

その時夏乃の目の前に立っていた男の人が、こんな瞳をしていた。

「――なんでも、いいけど」

やっとの思いでそれだけ絞り出すと、夏乃はすぐに目を逸らした。

恭一はそっけない口調で「俺も」とだけ言った。

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あきゅろす。
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